でも、年末年始のエアラインは繁忙期だ。航輝さんもみっちりとフライト計画が入っているはず。

 結果クリスマスグッズは元に戻し、彼はそのままベネチアングラスのコーナーに移動する。

「これを贈り物用に包んでくれるかな。母の誕生日が近いんでね」

「ありがとうございます」

 航輝さんがお母さまのプレゼントにと選んだのは、ベネチアングラスの香水瓶。女性に人気の商品だ。しかも私が仕入れた逸品で、偶然とはいえうれしい。

 包装を晴美さんにお願いして、私はカウンターに行き航輝さんにコーヒーを淹れる。

「今日は払うよ」

「いえいえ、ショーケースの中のものはどれを買ってくださってもサービスです」

 普通に棚に置いてある物と違って、ショーケースの中はどれもこれもベネチアングラスの高価なものばかりだ。航輝さんのようにサクサクと迷わず買ってくださるお客様はそういるもんじゃない。

「そうなの? じゃあ、遠慮なく」

「はい。この前とは別のトラジャがあるんです。試してみますか?」