おとといの電話でも、来るのは明日だと言っていたのに。

「そのつもりだったんだけど、つい空港からまっすぐ来てしまった」

 航輝さんの手には紙袋がある。きっとまた子どもたちへのお土産がたっぷり入っているんだろう。

 店の中に入ると朝一番のお客様が、会計をしている。ベネチアングラスを買ってくださったようで晴美さんがカウンターへと促していた。

「少し待っててくれる?」

「ああ、俺のことは気にしないでいい。どれどれ、まずはなにか買わせていただこうかな」

 航輝さんの荷物を受け取りスタッフルームに置いた。

 彼が店内を見回すのを見届けて、私は急ぎカウンターに入る。

お客様のコーヒーを用意して、ベネチアングラスの話をしながら、ふと思った。

 大福さんがこの店に来たとき、お店に興味があるというわりには一瞥しただけで、中をろくに見ようともしなかった。申し訳程度に雑貨を買っていったけれど、お店の商品についてなにも聞かれていない。