あのときは紗空を守らなきゃって必死だった。

 不思議なもので誰かを守るためなら強くなれる。今はフェリーチェと子どもたちを守るために勇気がでたのだ。

「あのときは結局女の子たちでストーカーを取り囲んで撃退したんだよね」

 ひとりじゃないって本当に幸せだ。しみじみとそう思う。

「とにかくよかったわ。怪我がなくて。でも、怖かったでしょ」

「うん。すごくショックだった。大事なグラスを投げるのに、なんのためらいもないんだもん。金や銀が使われていて本当に素敵なグラスだったのに」

 湖山麗華は自分で購入しておいて、どこがいいのかわからないと鼻で笑った。

 身につけていたものはバッグも服も真新しく、次々と新しいものを買っているに違いない。彼女には物を愛するという気持ちがないのだ。おそらく人に対しても。

「これでもう大丈夫ね」

「うん。とにかくホッとした」