航輝さんは日本を不在にする間、湖山麗華を見張っていてほしいと友人に頼んでいったという。氷の月の氷室仁さんは警備会社の役員もしているらしく、彼が手配してフェリーチェの周りを固めてくれていたらしい。

 湖山麗華が動いたと知って、燎さんが紗空を連れて駆けつけてくれたのだ。

私は知らないうちに、彼に守られていた。

「コーヒーでいい?」

「ありがとう。茉莉、毅然としていてかっこよかったわ!」

 あははと笑ってごまかした。

 とっさに出た行動とはいえ、怒りにまかせて代金を突きつけてしまったなんて、恥ずかしい。

「燎さんや警備員がいなかったら、あのまま殴られて騒ぎが大きくなっていた……。褒められないよ。でも、どうしても許せなくて、黙っていられなかったの」

「うん。茉莉が大事にしてるの知ってるもの。でもね、大学生の頃、ストーカーから茉莉が守ってくれたのを思い出したよ」

 そういえばそんなこともあった。

『いい加減にしなさいよ! 紗空になにかしたら私が承知しないんだから!』