彼が作ってくれた夕食は、私が買ってきた食材を使ってシンプルにグリルで焼いたもの。鶏肉をヨーグルトとお味噌に漬け込んだのは私の提案だったけれど、とてもおいしかった。

ピーマンはこんがり焼けた薄皮を取り、普段ならピーマンも人参もあまり食べたがらない子どもたちも、航輝さんが作ったというだけで、がんばって食べた。

 こんなものしかできないけど、と言っていたが、とってもうれしかった。

『君はいつの間にか俺の心の鍵を外していた。こんなふうに心を許せるのはいままでもこれからも君しかいない』

 彼の告白は性急だったけれど、私の気持ちに寄り添って ちゃんと待とうとしてくれる。

 五日間かけて、ゆっくり考えなくちゃ。

 ふと、辛い記憶が蘇る。

 母は再婚してすぐ妊娠し、急な環境の変化からか体調を崩して入院。義父は私にはまったく関心がなく、大きな家に残った私はおばあさまの管理下におかれた。

『まったくお前って子は、中学生にもなって、なんにもできないんだね!』