家が絡んでくる。できれば軋轢は生みたくなかったが、今回ばかりはなんとしてでもはっきりさせなきゃならない。

 麗華が泣こうが喚こうが。

空港内を歩いていると「ああ、神城」と声を掛けられた。

 振り返ると、友人のパイロットがいた。以前茉莉について聞いた彼だ。

「三年前になるが、俺が前に聞いた女性は〝マリ〟違いだったよ。ツルノマリではなく、鶴見茉莉だ」

「ああ、鶴見さんね。そういえば彼女も茉莉っていう名前だったか」

 ふたりは同期な上に名前が似ているので、混乱しないようツルノマリはマリさん、茉莉は鶴見さんと呼ばれていたらしい。

「鶴見さんは気の毒だったな。よく覚えているよ。優秀だし性格もよくてね。耳の方は落ち着いたのかな」

「ああ。もうすっかり元気だ」

 思った通り、茉莉はパイロット狙いなんかじゃなかった。

 まぁ、そもそも疑ってはいなかったが、友人の口から褒められると悪い気はしない。