夕方の五時頃、ひとりの男性客が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
彼は私を見ると微笑みかけてくる。
年齢は四十代くらいだろうか。どこかで見た記憶があると考え、ドキッと心臓が跳ねる。右目の泣きぼくろで思い出した。
まさか、大福 さん?
いろいろあって、すっかり頭の隅に追いやられていたが、母が持ってきた見合い相手の男性、大福さんに感じが似ているような気がする。
でも来るとは聞いていない。写真でしか見ていないのから人違いかもしれないし、もし私に会いに来たならば、声を掛けてくるだろう。
緊張しながら近づくと「茉莉さんですよね?」と、彼はにっこり微笑んだ。
「もしかして、大福さんですか?」
「ええ。突然おじゃまして失礼かと思ったのですが、都内に用事がありましてね。茉莉さんがどのようなお店にいらっしゃるのかと興味があったもので」
どうしよう。答えが出ていない。
航輝さんとの思いがけない出会いのせいで、縁談について考える余裕がなかった。
「いらっしゃいませ」
彼は私を見ると微笑みかけてくる。
年齢は四十代くらいだろうか。どこかで見た記憶があると考え、ドキッと心臓が跳ねる。右目の泣きぼくろで思い出した。
まさか、大福 さん?
いろいろあって、すっかり頭の隅に追いやられていたが、母が持ってきた見合い相手の男性、大福さんに感じが似ているような気がする。
でも来るとは聞いていない。写真でしか見ていないのから人違いかもしれないし、もし私に会いに来たならば、声を掛けてくるだろう。
緊張しながら近づくと「茉莉さんですよね?」と、彼はにっこり微笑んだ。
「もしかして、大福さんですか?」
「ええ。突然おじゃまして失礼かと思ったのですが、都内に用事がありましてね。茉莉さんがどのようなお店にいらっしゃるのかと興味があったもので」
どうしよう。答えが出ていない。
航輝さんとの思いがけない出会いのせいで、縁談について考える余裕がなかった。