「あの…ごめんなさい。柳怜(やなぎれい)くん…だよね…?」

「うんっ!そーだよ」

「それで…その…“柳”って漢字、“ゆう”って読めるなって思って…」

「そうなの?」

「いや、ほんとの音読みは“りゅう”なんだけど…柳って書いて“ゆう”って読む姓のひとがいるのね…それで、じゃあ繋げたら“ゆうれい”だなって自己紹介のときに思っちゃってて………ごめんなさい!盛大に失礼案件だよね!?」

「いいよ、それで」

「へ…?」

「それでいいよ?でも特別にね?」

「特別?」

「きみがつけた愛称だから、それはきみの所有物にして?」

「…っ」

「おい、入学早々ナンパすんな」

かっちゃんがゆうれいの頭をこつんって小突いた。

そんなこと気にもしないで、
ゆうれいは「よろしくね、ゆめ!」ってハニかんだ。

ゆうれいが呼ぶ私の名前は、
かっちゃんが呼ぶ「結芽」よりも、やわらかくて子どもみたいな口調だった。