「ゆうれい?」

「やめればいいじゃん」

「やめるって?」

「風のこと…好きなんやめれば?」

「…なに言ってんの」

「誰かを好きで苦しいならやめなよ。ゆめが逃げてきてくれたらさぁ…俺がその逃げ場所になるよ?」

ぎゅって抱きしめられたままだからゆうれいの表情は見えない。
声が震えてるってことだけはちゃんと分かった。

寒いのかな。

それとも、泣いちゃいそうなの?


「ゆうれい」

「ん…」

「私ね、おいしいもの食べたり、きれいな物を見たり、楽しいことに出会ったときにね」

「うん」

「一番に見せたいなって思い浮かぶのは…かっちゃんなの」

「うん…」

「かっちゃんを好きになった中一のときからずっと」

「知ってるよ。知ってるけど、その俺より長い三年間をさ…俺は埋められない?」

「埋める?」

「うん。追い越すことはできなくてもせめて追いつくことくらいはできない?ゆめは猪突猛進型だからさー、なかなか後ろは振り返ってくれないだろ?でも隣に並べたら視線くらいは合わせてくれるかなって」

「…なにそれ。変なの」

「ゆめとおんなじ物を見て、おんなじことを感じたいんだ。ゆめが傷ついて泣いちゃいそうなら俺を利用してくれたらいい。俺のことも見てよ」

「なんで…」

「まだ分かんない?ゆめのことが好きだって言ってんの。男として」

「っ…」