「なんでこころちゃんがイライラするの」

「風くん、言ったらしいじゃん?復讐なんて面白くなかったって」

「なんで知ってるの…」

「菊池さんに聞いたの」

「ニカ?なんで?」

「あれ?そっちは聞いてないんだ?…ま、聞いてないか。口も聞いてもらえてないって感じだもんね」

「それは…」

「菊池さん、冬休み中に風くんと連絡取ってたみたいだよ?それでー、クリスマスに何があったのか問い詰めたみたいで?だから事情は知ってるっぽいよー」

「そんなの…何を聞いたってかっちゃんが正しいことには変わりないし」

「そりゃそーでしょ。風くんはただの被害者だったんだから。でも、本当にただ被害者でいればよかったのにね。自分まで責められるようなことしちゃってさ」

元々、こころちゃんが豹変してしまう原因を作ったのは私かもしれない。
私達の関係が壊れてしまう原因を細工したのはこころちゃんかもしれない。

なのになんでこころちゃんはこんなにも飄々としていられるんだろう。

「こころちゃんって…」

「ん?」

「もうかっちゃんのこともゆうれいのことも本当に好きじゃないの?」

「え?今更?なんで?」

「すごく吹っ切れてるって感じだから。こんなことしちゃうくらいゆうれいのこと好きだったのにそんなにあっさりやめられるの?」

一瞬、ジッと私を見たこころちゃんが手を叩いて笑い出した。

「あっはははははっ…!ちょっとやめてよ…あーお腹痛いって…!」

「こころちゃん…?」

「あのさぁ…茅野さんってほんと、分かってないね」

フェンス越しから運動場を見下ろしたこころちゃんが「あ…」って呟いた。
一緒に見下ろした私に、「あれ、柳くんじゃない?」って、校門に向かって歩いていく男子生徒を指さした。

屋上から見下ろす生徒達は小さくしか見えない。
男子生徒は金髪で、たぶんゆうれいと同じくらいの背丈だった。

「違うよ」

「えー、なんでそんな言い切れるの?」

「こころちゃん」

「何よ」

「ゆうれいはもう金髪じゃないよ。二学期からずっと」

「………あー、確かに。そう言えば」