かっちゃんの部屋を飛び出して階段を駆けおりた。
玄関を飛び出しても当然かっちゃんは追ってこない。

頭の中でぐるぐる回るかっちゃんの言葉。

どんなに必死になって想ったって私の恋はとっくに終わっていたのにバカみたい。

気づきもしないですがりついて修復不可能にしてしまったのは、かっちゃんのことだけじゃない。
私の中にあった大切なものを全部壊してしまった。

私さえ居なければ当たり前にみんなの中にもあった大切を守れたのに。

「ゆめっ…!」

無我夢中で走っていた。
雨が降っていた。

今年は雪が降らなかった。
クリスマスだから、特別な日だからって期待していたホワイトクリスマスにもならなくて、
かっちゃんが用意してくれた、大嫌いな生クリームの真っ白だけが脳裏に焼きついた。

「ゆうっ………なんで…」

グッと引き寄せられて強く抱きしめられる。

なんでゆうれいがここに?
なんで急に抱きしめるの。
こんなに寒いのになんでコートも着てないの…。

ゆうれいの肩に涙が沁みていく。
雨が二人を濡らしていく。

声を押し殺して、全部雨のせいにした。
それなのに肩が震えるから、
どれだけ歯を食いしばってたって嗚咽が漏れるから。

強く、痛いくらいに強くギュッてしてくれるゆうれいのハスキーがかった、かっちゃんよりも高めの声が雨の音も耳の奥で鳴り止まないかっちゃんの悪意も掻き消していくみたいに、鼓膜を揺らす。

「利用してくれていいって言ったじゃん。まだ好きなままなんだよ…」