かっちゃんの体を引き剥がそうとして、肘が棚にぶつかった。

ガタッて音がして、向こう側から女子達が「わっ!びっくりしたー」って驚いている。

かっちゃんが私の腕を引いて、図書室を出ていこうとした。

女子達が後ろから「二年の先輩だっ!」って言った。
後輩にもやっぱりかっちゃんは知られてるんだ。

手、繋いでるとこ見られちゃったな。

「なんで結芽が邪魔すんの」

「だって…!見られたらだめじゃん!」

「でもドキドキした?」

「それはっ…するよ…」

「ふーん?じゃあ二人だけになれるとこ行こっか?」

そのまま校門を出て、当たり前みたいにかっちゃんのおうちの方向へ並んで歩いた。

「なんで?」

「なんでって。もう我慢できないでしょ?」

「っ…」

「てかさ」

「うん?」

「こころのこと忘れさせてって言ったけど俺だって忘れさせたいんだけど?」

「なにを?」

「怜のこと」

立ち止まって私を見たかっちゃんはちょっとだけ冷たい表情をした。

怒ってる…?わけではなさそうだけど、
くちびるの左側にだけちからが入っていて、キュッと上がっている。

「ゆうれいのこと?」

「あいつに触れられたとこ全部。思い出せなくしてあげる。俺の彼女だろ?」

耳元で囁いたかっちゃんの声に、耳も脳内も支配されていく。

甘い言葉ばっかりをくれるかっちゃんのことを信じてしまう。

本当に私のこと、好きになってくれようとしてるんだ。

本当にかっちゃんの彼女なんだ。

そう思ってもいいのかな。