「戻りたいよ…！」

「それだけでいいの？」

「え？」

「本音言って？もっとあるよね？結芽の欲」

「なに…それ…」

「こんなことになっちゃうくらい好きでいてくれたんだろ？これできっぱり終わりにできた？」

操られているみたいに、ゆるゆると首を横に振った。
かっちゃんにそんなこと聞かれたら否定できるわけがない。

だって…私の中のかっちゃんへの気持ちは誤魔化そうとしても消せてなかったんだから。

「俺らさぁ、付き合っちゃおっか？」

「………は」

かっちゃんが言おうとしているのは″そういうことだ″って分かってはいた。
だけど改めて言葉にされたらなんでそうなったのか混乱してしまう。

「俺も結芽もお互いのことはもうよく知ってるし。元々相性だって悪くないしさ」

「ふざけてる…わけじゃない？」

「もう俺のこと好きじゃない？」

「それは…人の感情を利用しちゃうくらい、そうでもしなきゃ忘れられなかった女だよ…簡単に好きじゃなくなれるのならとっくにそうしてたよ」

「じゃあいいじゃん。それで全部丸く収まるなら」

「収まるわけないじゃん！もっともっと幻滅されてそれこそ終わりだよ。周りになんて言われるか…」

「じゃあ周りには黙ってよう？俺さー、こころも親友のこともどっちも守りたかったとき、結芽に全部守りたいなんてずるいみたいなこと言われただろ？けっこう悩んだんだよね」

「それは…」

「ごめん、ごめん。またいじわる言っちゃったな。こころのことは結局守れなかったけどさ、結芽のことならまだ守れるかなって」

「なんで？私なんかとは縁を切ったほうがいいでしょ？私のこと見てたら嫌でも思い出しちゃうでしょ？」

「だから協力してよ」

「協力？」

「これからきっと結芽のこと好きになる。怜がしたみたいにさ、俺にこころのこと忘れさせてよ」

この人は何を言っているんだろう。
私の中にもまだ“まとも”な部分は残っていて、
冷静にそう思えるのに、なんで…なんでかっちゃんの声で言われると否定できないの？