「ゆめっ…待って!」

「お願い…ゆうれい離して。最後まで最低でごめんね。こんなときまで私を正当化しなくていいんだよ」

「そんなんじゃない。ゆめとのことを正当化なんてできないことくらいもう分かってんだよ…。こんな最悪な形で終わらせたくないんだ」

「結局こうなってたよ」

「そんなことないだろ?今までは間違ってたけど、それでもいいってゆめに強要したのは俺だけど今からでもやり直せるだろ?」

「なんでそこまで求めてくれるの…。私、ゆうれいとダメなことしてるときね、ダメだって分かってても心地よかったんだよ」

「それって…」

「恋って意味で好きとかそんなんじゃなくて。正しい愛情でもなくて。たぶん、優越感」

「それでも俺と居てゆめが救われるならそれでいいんだよ。俺が望んだことだ」

「ゆうれいのこと本当に大好きだったよ。一緒に居て楽しかったし気も合うし。私を独りにしないでいてくれた。どんなに最低最悪な人間でも求めてくれる人がいるんだって心地よくて安心できて…悦に浸ってた。私の中でゆうれいは“絶対”だった」

「それは…悪い意味で?」

「………たぶん、そう。私が何を言っても何をしても絶対に離れないでいてくれる。一生この人はこのままなんだって思える。私にとって、ゆうれいは絶対的な毒だった」

私の手首を掴む手のひらのちからがぎゅーって強くなった。

さっきから喉にグッてちからを入れていて、
これ以上何かを喋ったらそれは嗚咽になって溢れ出すって自分で分かっていた。

泣きたいのも、泣いていいのも私じゃない。

どんなに苦しい言葉を投げつけても
それでもまだ私を信じようとしているこの人を私の前から消してあげなくちゃ。

ゆうれいの未来をこれ以上は奪えない。