私はびくっとして、彼を見た。もしかして、相川君が話したのかな。今、同じ課にいるはずだ。

 私は一度だけ彼の前で酔っぱらって、彼氏もいらないし、結婚もしないと言ってしまったんだよね。

 理由を聞かれて、それだけは適当にごまかした。本当の理由を話してはいない。彼には話せない。

「そうですね。いえ、少しの間だけいたこともあるんですよ。あっという間にフラれましたけど……」

「その、お前を振った過去の男に操を立てて、いまだに他の男に見向きもしないとかそういんじゃないだろうな」

「並木さんたら……そんなことありませんよ」

「じゃあ、どうしてだ?」

「それは秘密です」