記憶よりも口にできない想いが、たくさんの感情が押し寄せて来て、涙があふれた。
「信也さん……」
彼も私を見て涙を流した。そして私の押し花を持った手を両手で握ると口元に持って行った。
「ああ……そうだ。良かった、思い出したんだな。俺を一時的に忘れるほど頭を打ったのか。それ以外の怪我は?」
「身体じゅう痛い。特に肩が痛いの。腕が上がらなくて……左肩と頭を打ったみたいで……」
彼はハンカチを出して涙を拭いてくれた。そして自分の涙も拭いて、そのハンカチを見せた。
「これも凛花のプレゼントだ。東京に来た時、君がお礼にくれたものだよ。押し花で記憶が戻ってよかった」
懐かしいハンカチが目の前にあった。そうだ、これ私があげたやつだ。二人で顔を見合わせ笑顔になった。