私は手を伸ばして、ベッドの側で私の前で嗚咽している彼の背中をそっと撫でた。

「……泣かないで、大丈夫」

 彼は顔を上げ、涙目で私を見た。

「凛花」

 頭の中であの時と同じ顔の人が同じ名前を呼んだ。そして、私はこの人をこう呼んだ。

「しんや、さん……」

「凛花!」

 彼が私に抱きついた。彼の香り。急速に思い出した。

 私の大好きな人。最近ずっと会えなかった。電話もできなかった。私の異動を知られたくなかったからだ。