* * *

 私は記憶があいまいになっていた。覚えていることもあるのだが、忘れていることの方が多い。

 前後が結びつかず説明されてもわからないことがあった。まばらな記憶はパズルをはめるように戻るかもしれないと医者に言われた。

 でも、目覚めている時間が多くなった。午前中の回診が終わった時間だった。

 突然、ノックの音がした。こちらが返事もしないうちにドアがすごい勢いで開いた。

「凛花!」

 駆け寄ってきた彼は、私を見て泣きそうな顔をした。そして、身が起こせない私を見て、今度は目を見張った。

「……あ、えっと……」

 驚いたが怖くはなかった。なんでだろう。