父親は、橙華のことが嫌いだ。



「行ってなくても、十分な成績は誇っています! お父様、橙華を見捨てないで───」

「誇っている成績はたたかが上位だろう? 一位でなければ意味がない。わかったか?」

「……はい」



反論した言葉は、すぐに塞がれてしまった。

私は、この親を許さない。

それでも、親に従う理由。

もし私が、橙華のことに関して反論したら。

橙華に、矛先が向かってしまう。

一度、橙華のことで反論したことがある。


『なぜこんなこともできないんだ!! 蓬は一位を取ったと言うのに……この出来損ない!』

『っ、あ゛……!』

『や、やめて……!!』


まだ、中学一年生だった。

ある大会で一位になった私と、下から数えたほうが早い順位を取ってしまった橙華。

その橙華に、暴力を振るったんだ。

さすがに私はブチ切れ、父親を殴ってしまった。


『な、何するんだ蓬!?』

『いい加減にして!! 橙華は悪くない!! お父様だって全て完璧じゃないでしょう!? どうして同じ人間を同じように扱わないの!?』


一応にも空手の黒帯、師範格を持つ私。

あのときの倒れた顔は、驚きで染まっていた。