家に帰り、部屋に入る。
「蓬様、お帰りでしたか。申し訳ありません、お出迎えをせずに」
部屋では私の侍女で同い年ある、和葉が部屋の掃除をしていた。
「いいのよ。それより、お父様とお母様はまだお帰りになってないのかしら」
「ええ、そのようです。ただ、今日の夜には帰るから夕飯は一緒に食べようと」
「わかったわ。……橙華は?」
部屋から出ようとした和葉を呼び止め、言葉を投げた。
すると、恐る恐るこっちを向いた。
「……橙華様なら、ご自分の部屋かリビングにいるかと」
「……わかった」
橙華がリビングに来るときなんて、ほとんどない。
だって、橙華は───。
「橙華……?」
「っ……!」
リビングに行くと、そこにはコップに水を注いでいる橙華の姿があった。
私に気づいた橙華は目を見開いたあと、早足で去っていった。