「ええ、バッチリ聞こえていました。確かにあの子は私と違うかもしれませんが、それは悪い事でしょうか?」

「ま、まさか……! ご、ごめんなさい!」



頭を下げたのを見て、怒りも少し収まった。



「いえ、私こそすみません。ただ、私にとって“橙華(とうか)”は、大切な妹なので、悪く言うのはやめてください」

「す、すみません……」



平謝りをしてきた人を置いて、歩き出す。



「ねぇ、今の見た……?」

「あんな出来損ないの妹のために怒るなんて、なんて健気で心美しい人なのかしら……!」

「モテるのも当たり前ですわよね……!」



どうやら見られていたようで、コソコソ話が聞こえる。



「それにしても、この前の定期試験、また学年トップだったらしいですわ」

「本当? やはり素晴らしい方ですわ。わたくしが男性でしたら婚約者にしますのに」



お嬢様言葉を喋る人がいるのは、ここは“普通の学校”ではないから。

ここは、聖フェリシテ学園。

小中高大一貫の、超お金持ち学園。

財閥の令嬢、御曹司が通う、特別な学園。

もちろん私も財閥の令嬢。

初等部から通い、約10年この学園に在籍している。

いや、正確には10年と半年。

つまり、今は高等部二年生。