「早く殿方を見つけなければ。あなたはこの家の唯一の希望なんだから」

「……橙華だって……」

「え? 何か言いましたか?」

「……いえ」



言いかけた言葉を、ゴクリと飲み込んだ。

私に、橙華のことを語る資格はない。

守ることさえも、できなかった私が。



「まったく……蓬、もう高校二年生なんだ。せめて大学部に入るまでに見つけなさい」

「……はい」



見つけろ、というのは、婚約者のことだ。

財閥の令嬢が恋愛結婚なんて一般人にしたら笑える話だが、財閥界隈では普通のこと。

今はもう昔と違って、政略結婚は他の会社の印象が悪い。

それは取引での印象も崩す。

だから必死に恋愛結婚させようとしている。



「このままだと、どちらか政略結婚する羽目になってしまうぞ」



父親に言われた言葉に、ビクリと反応する。

そう、どちらか恋愛結婚できないとなれば、二人のうち、一人が政略結婚することになる。

女は家庭に収まるもの。

そういう価値観は変わらない。

どちらかが政略結婚、恋愛結婚で家を出るか、婿を向かい入れ結婚するか。