「旦那様、お食事のご用意ができました」



使用人がリビングに入ってきて、父親に声をかけた。



「ああ、わかった」



テーブルに移動して、席に着く。

橙華はまだ来ていなくて、父親は顔をしかめた。



「なんだ、まだ橙華は来ていないのか」

「橙華様なら今から来ると思います」



後ろにいた和葉がそう答えたとき、扉が開いた。



「おい橙華、遅いぞ。まったく……」



橙華が扉からするりと入ってきて、何も喋らずに席に着く。

それから、食事が始まった。

決まりなんてなければ、“こんな人たち”と食事なんてしないのに。



「蓬、いい人は見つかったか?」



突然私に振られた話。

……またか。



「申し訳ありません、まだいい人は」



そう答えると、母親が顔をしかめた。