あのとき、何をしていたらよかったんだろう。

どうすれば、橙華を、守れたんだろう。

私は、罪人だ。

だから、できるだけ親の関心が向くように、必死に勉強して、仮面を被った。

いい子で、いるために。橙華を守るために。

でも、そのせいで更に橙華は馬鹿にされている。

もうどうすればいいのか、私にはさっぱりわからない。



「蓬、お前は九条家の最後の希望なんだ。間違っても橙華と同じ道は歩むなよ」

「……はい」



あともう少し、もう少しの辛抱。

橙華、今度こそ絶対守るから。



「腹減ったな。蓬、今日は早く食べるか?」

「……お父様がそれでいいのなら、私は構いません」



いつも通りの“笑顔”を浮かべ返事をする。



「わかった。すぐに準備をさせる。おい、橙華を呼んでくれ」

「かしこまりました」



普通、出来損ないと馬鹿にする娘を呼ばないと思う。

でも、この家は由緒正しき家な上、伝統を重んじる。

家族全員で夕食をとるというのが決まりらしい。

ただ、橙華を馬鹿にするために呼ぶくせに。