「ふえっ! だだだ、ダメぇ……っ!」



私は慌てて、神谷くんの胸板を両手で押す。



今の状況にドキドキしすぎて、全身の血が沸騰しそうだ。



そして、私の頭にまっさきに、浮かんだのは妹の華乃音のこと。



華乃音は、神谷くんのことを本気で狙うと言っていた。



つまり、それはーー、神谷くんのことが好きなわけで。



私はそれに対して、頑張ってみたいなことを華乃音に、今朝、告げてしまっている。



このままでは、私は大切な妹ーー、華乃音を裏切ってしまいかねない。



今ならまだ、神谷くんを拒否することができる。



うんん、拒否しなければいけない。



私の唇を触るのをやめた神谷くんの隙をついて、私は早口で言った。



「わ、私は、神谷くんのカノジョになれません!!」



すると、神谷くんにひょいっと丸メガネをとられてしまう私。


「メガネ邪魔」



「か、返してーー、んぅ」



私の唇は、あっさりと神谷くんに奪われてしまった。