「あっ……、ご、ごめん。変な事、聞いちゃった。今の忘れて」



「えっ、奥森くん、待っ……」



私が引き留めるより先に、奥森くんはさっさと自分の席に戻ってしまう。



……? 奥森くん、一体どうしたんだろう?



ハテナマークを私は浮かべながら、鞄の中身をあさっていると。



教室の後ろのドアがガラッと開いて、鞄を肩にかけた神谷くんが現れる。



女子全員が熱い視線を向けているにもかかわらず、神谷くんは平然と席についた。



すると、すかさず華乃音が神谷くんに話しかける。



「神谷くんて、律希って名前なんでしょ? かっこいいね~」



「ああ」



「頭もいいんでしょ? この間のテスト、クラスで一番なんて凄い~」



「ああ」



神谷くんは、一生懸命にほめる華乃音に対して、興味なさそうに「ああ」としか返事しない。



私は不安になり、チラリと見るとーー。



「佳乃愛、ちょっとついてこい」



「へ!?」



神谷くんは私の手をいきなり掴んで、教室から出ていく。