そう思った時、スプリングに腰掛けた黒堂が煙草の息を吐き出しながら笑った。 「言っとくけど、逃げ出そうなんて思うなよ」 「え……?」 「ま、できるもんならやってみろって話だけど」 暗闇に目が慣れてきたせいで、ようやく気付いた。 この空間にいるのが、私と黒堂のふたりじゃないことを。 何人もの黒堂の手下が、私たちを囲んでいた。 なんで私に拘束具が着けられていないかがわかった。 着ける必要がないからだ。