「だ、だれですか」
「オレ? オレは黒堂組の黒堂だ。あんたんとこの楪と敵対する組織って言ったらわかるかな」
サングラスをかけ顔はよく見えないけれど、20代後半と思しきその人は、余裕げに笑う。
ここはどこ……?
暗くてよくわからないけれど、この人が所有するコンテナか小屋かなにかだろうか。
部屋の隅に置かれていた、布を纏わないスプリングの上に寝かされていたよう。
……そうだ。
私、帰る途中で布で顔を覆われて、眠らされたんだ。
そしてここに攫われたんだろう。
逃げなきゃ……。
幸か不幸か、私の身体に拘束具は見当たらない。
今なら逃げ出せるかも……。