「じゃ、背中流してくれる?」

「はい」


湯けむりでもくもくしているから、視界が曇っていて助かった。

直視していたら、視界に与えられる刺激の強さで倒れていたかもしれない。


バスチェアに座る琥珀くんの後ろに膝をついて立つ。


と、その背中に、肩から腰にかけて大きな傷跡が走っているのを見つけた。

傷はもう塞がっているけれど、見るだけで痛々しい。


数多の修羅をくぐり抜けて今、琥珀くんは総長の座についている。

でもこの傷をつけられた時、どんなに痛かったんだろう……。

そう思うとなぜか、傷がないはずの自分の背中も痛む気がした。