どきりと反応してしまう単純な鼓動の音をかき消すように、私は小さく首を横に振った。


「で、でも食べ過ぎるわけにはいきません」

「なんで?」

「愛人になったからには、スタイル維持は必要なことかと……」


自分でこんなことを言うのは恥ずかしいけれど、私の主人は琥珀くんで、この身体はもう琥珀くんのものだ。

食べ過ぎで見苦しい身体になるわけにはいかない。


するとぱちりと瞬きをしたのち、琥珀くんがふはと吹き出した。


「面白いこと言うな。昨日見た感じ、もう少し太ってくれた方が抱き心地いーんだけど」

「なっ……」


琥珀くんの返しに、今度は私が虚をつかれる。

近くにシェフが控えているというのに、そんなことを言うなんて。