うう、琥珀くんに弱い私のばか……。


膝の上に向かい合わせになるように座らされると、この世のものとは思えないほど綺麗な顔が迫って、鼓動が忙しなく慌てだす。

私はこの美しい瞳に、何度見つめられても慣れることができない。

そんな私の動揺を知ってか知らずか、琥珀くんが私の髪を耳にかけながら語りかける。


「ありがとな、莉羽ちゃん。こんなふうに自分のために料理を作ってもらうなんて初めてだった」


その声の中には、ほんの少しの切なさが滲んでいて、私はきゅうっと胸が痛むのを感じた。

琥珀くんがこれまでどんな人生を歩んできたのか、私は知らない。

でも、あまりいいものではなかったことが伝わってくるから。


「俺の初めて、おまえばっかりだよ」


桜色に一滴の赤をこぼした、魅惑的な唇があまりに心地いい音色を紡ぐ。