すると彼女はふにゃりと笑った。 まるで目の前で花が綻ぶ瞬間を見たような気がした。 『よかったあ……』 『……っ』 心を奪われるなんて、こんなに呆気ないものだと知らなかった。 なににも執着しなかった俺が、初めて〝欲しい〟と思った。 この子が、欲しい。 この子の笑顔が、心が、すべてが、欲しい。