マンションに着いてからも、私は心を失ったようなままで。
がらんとしたリビングのソファーに座ったまま、しばらく動くことができなかった。
時計の秒針の音だけが、がらんとした空間の中で息づいていた。
今は自分の呼吸の音も心臓の音も、無になってしまったかのように聞こえない。
この恋心には蓋をするべきなのかもしれない。
お仕事でしかないのに、好きだなんて伝えたら、きっと迷惑だから。
ここは……出て行くべきなのだろう。
お父さんが捕まった今、私を保護をする必要はもうなくなったのだから。
それどころか、私は何度も琥珀くんに守られて、琥珀くんの仕事を増やしてしまっていた。