そんな私に、東郷さんは私が理解できるようにか幾分ゆっくりとした口調で説明する。
「おたくの父親が、摘発対象の黒鉄組と繋がっててな。それであんたが黒鉄組に売られるって情報を得たボスは、あんたを保護することにしたんだ」
「……じゃあ、私を買ったのは保護のためだったんですか……?」
「まあ、そういうことになるな」
……そう、だったんだ。
仕事のためだったんだ。
そう思うと、胸がきゅううっと締めつけられる。
水の中をもがくような息苦しさに襲われる。
近づいたと思ったのに、遠ざかって。
私に少しでも気を許してくれていると、大切にされていると、そう思っていたそれは、すべて勘違いだったのだ。
ようやく居場所を見つけられたような気になっていたけれど、私はやっぱりだれにも愛されない存在なのかもしれない。