「だからお前を先輩に売ることにしたよ。お礼は弾んでくれるらしい。よかったな、お前にも価値はあったんだ」
「なに、言って……」
「楪さんはお前が家出をしたと思うだろう。それで完璧だ。でもまさかうちの娘がこんなに金になるとは嬉しい誤算だ、なあ、母さん」
「本当ね。これで私たちも安泰だわ」
私を置いてきぼりにして弾むふたりの声が、まるで悪魔の笑い声のように思えてくる。
一度ならず二度も捨てられるなんて。
私、今日誕生日なのに……。
きっとふたりにとってはどうでもいいことで、そんなことなんて忘れてる。
愛されたかっただけのに。それだけなのに。
私はただのお金になるモノでしかないんだ。