「わかり、ました。愛人になります」 拳を握り、瞳を伏せ、私は血のにじむような思いでそう告げた。 死に行くわけじゃない。 家族3人、生きていくために、私はこの身を売ることを了承したんだ。 そう気を強く持たなければ、あまりの恐怖と絶望に押し潰されそうだった。 「荷物を纏めたら行くぞ。あの方が待ってる」 サングラスをかけ、髪を剃った男の人がどすの利いた声で怒鳴る。 たしかに絶望の足音が聞こえた気がした。