するとだるそうに首に手を回し、男の人がため息をついた。
「あのなぁ。どんだけの借金だと思ってるんだ? 死ぬまであんたひとりが働き続けたって到底返せる額じゃねぇんだわ。それに愛人になる方が効率いいだろ。愛人になりゃ、衣食住が保証されるんだぜ」
「でも……」
「じゃああれか? 両親の臓器でも売るか?」
「ひっ、それは……っ」
背後でお父さんとお母さんが身を竦める気配。
内容とは見合わないさらりとした口調に、私の心臓も一気に冷え切った。
愛されていなくたって、私にとっては実の両親であることに違いない。
このふたりに危害が加えられることだけは嫌だ。