どれぐらい泣いたんだろう。



泣いたせいかな。
鈴原くんの腕の中が心地よくて少しウトウトしてきた。





「日和?」

優しい声にハッとする。



「鈴原くん、あの…‼︎」





私の言葉を遮るように鈴原くんはキスをした。




少し唇が離れて


「もう一人で泣かんといて。俺がいるから」


そう言ってまたキスをした。



何も言葉が出ない私の気持ちを全部わかってくれているような鈴原くん。



【泣かんといて】


委員会のあの日も言ってくれた。






「なぁ、日和」


顔を近づけたまま。

おでこをくっつけてコツンとなる。



「前、俺ん家でこういう事を″慣れてる”って言ったやろ?」




あっ…
前、嫌がらせに遭ってみんなで鈴原くんのお家に行かせてもらった時。



「本当…だから…」 

やっと出た言葉がこれ。
自分にうんざりする。

でも、今はこれ以上言葉が出ない。





「慣れんな!!」


大きな声にビクッとした。



「こんな事慣れる事じゃない!!自分自身にも絶対言うな!!」





あれだけ泣いたのにまた涙が溢れてくる。






だって



だって





「だって…慣れなきゃ‥慣れなきゃ辛いだけだもん…!!」


そう叫ぶと鈴原くんはニコッと笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でた。



「それでいいねん。なんでも俺に言って、叫んで」



涙が止まらない。


「桜たちも同じ気持ちやと思う。アイツはほんまにええ奴やから信じたって」


もちろん、信じてるよ!
大好きだよ!

でも涙のせいで声に出ない。


私は必死で頷いた。




「まぁ、悔しいけど加藤もな」



ポンポンと私を抱きしめながら背中を優しく叩いてくれる。

まるで赤ちゃんをあやすように。