キーンコーンカーンコーン…


4時間目が終わった。

お昼の時間。




あれだけ楽しみだったのにどうしたらいいかわからない。




やっぱり私の意思は弱い。
すぐ振り回される。




「日和、お昼いこ♪」

うん



心の中ではそう答えているのに声に出ない。


「日和…?」



ドクンドクン



嫌な鼓動が止まらない。




「私トイレに寄って行くから桜ちゃん達先に行ってて」

そう言って私はお弁当箱を持って教室を出た。




「日和!」
「前川!」



ごめんね、桜ちゃん、加藤くん。


私のせいで嫌な気持ちにさせてしまって。




ごめんなさい。






『みんな日和と話しちゃだめだよ』




息が荒くなる。

思い出したくないのに蘇る。





『みほちゃんが好きなヒロくんを日和が狙ってるー』

『友達の好きな人狙うとかキモすぎ』

『鏡見てからにしろよなー』




聞かないつもりだったけど、ずっと聞こえてきていた声。


完全な誤解だった。


なのに、たったその誤解1つで全てが変わった中学2年生の春。





「はぁはぁ…」

無我夢中で走っていると、音楽室の前に来ていた。




扉を開けると誰もいない。

静かな空間。




「う‥」


一度出だした涙は止まらない。


堰を切ったように溢れ出てくる。





私にとって落ち着くのはこの場所。

でも、何かが足りない。