「なーんて、私が何偉そうに言ってるねんって感じよね。ごめんね」

次の瞬間、加藤の顔が近づいてきて気づけば抱きしめられていた。


「えっと…加藤……?」


ヤバイ、ドキドキ心臓の鼓動が激しく鳴る。
絶対加藤にも伝わっている。



「ありがとう…。いいのかな、進学して……」


抱きしめる力が強くなる。
そして少し震えている加藤の手。



「当たり前やん!加藤の人生やで?奨学金もらって、バイトも頑張っちゃお!」


「ずっとバイト三昧かもな」

「それでもいいやん」

「そうだな」


加藤の体温が伝わる。
このまま離れたくない。


加藤、たくさん悩んだよね。
今も絶対迷ってる。



「私でよかったらなんでも聞くし。あっ!バイト一緒の所入って、一緒に頑張ろうかな」

私何言ってんだ…


「えへへ、なーんて…」

その瞬間、少し加藤が離れたかと思ったら唇に何かが触れた。



ううん、何かなんかじゃない。
加藤の唇だった。


私は驚き過ぎて目が閉じれなかった。



数秒触れた唇はそっと離れていく。


私は言葉が出ない。
ドキドキは最高潮で失神してしまいそう。


「ごめん…!急に…」

なんで謝るん?


「う、ううん…!!」

私、今だ!!気持ち言うんだ!!


「あっあのね加藤、私…!!」

「ごめん桜、俺から言わせて?」


なんだろう。。
キスしてもらったのに、不安が拭えない。


どうしてキスしたの?


「今まで我慢してたのに、ちゃんと伝える前にキスしてしまった」


「加藤?」

「俺さ、就職と悩んでてもしこのまま就職したら学生の桜とは住む世界線が違い過ぎて、一緒にいれないんじゃないかと思ってた」

「そんな事…!」

「俺が弱虫だっただけ。桜の事を心配してるように見せて、実は自分が寂しい思いしたくなくてもう一歩進む事から逃げてたんだ」


「…………」


「ずっとひた向きに俺のそばにいてくれる桜がいつの間にかすげー特別になってて、桜がそばにいない未来が見えなくなってたんだ。でも、こんな俺じゃ桜を大事に出来るのか…とか守れるか…とか色々考えてさ…」


加藤の口から出てくる私への気持ち。

こんなに考えてくれていたの?
本当にあなたの未来に私を映してくれていたの?


「俺は守れるのかなって思ったら急に怖くなる自分もいて…俺ってこんな弱いんだって実感したよ」


私はどう言葉をかけたらいいの?


「鈴原に言われたよ」

「悠?」

「うん。逃げんなって。絶対後悔するし、何より加藤はそばで守れるんだからって」


悠。。。


「俺の二の舞になるなってさ」


「アイツは…」

日和との事を言ってるんだろうな。


「足立も、桜なら絶対受け止めてくれる、俺が一度は好きになった女だぜ?って言ってたよ」

「何アイツ、偉そうに!」

あははと笑う加藤。


「俺さ、すげーいい友達を持ったなって実感したし、こんなに人の事を相談したのも初めてだったんだよ」


加藤が改めてこちらに向く。



「桜、こんな俺だけど付き合ってくれますか?」


ドキドキドキドキ…


「俺は桜がすげー好きだよ」


涙が溢れる。


一気に溢れた涙は行き場をなくして、こぼれ落ちる。