もうすぐ17時半。
待ち合わせは17時。
面談、長引いてるのかな。
卒業後の事、きちんと話せたのかな。


加藤って色々と我慢しがちだからなぁ。
自分の事は多く話そうとしないし。
いつも人の事優先。


あっ、なんだか日和に似てるかも。


そんな事を考えていると、向こうから走ってくる人影が見えた。


「桜!!待たせてごめん」

走ってきてくれたからか、汗だくの加藤。


「走らなくてよかったのに」

「はぁはぁ…すげー待たせてしまったし…」


私ってば最低だ。
走ってきてくれて汗だくで疲れている加藤にも、ドキドキしてしまう。
心配ももちろんだけど、ときめいてしまってる。


「急がせてごめんね」

「いや、俺がごめん。母さんと話してたら遅くなった。スマホ家に忘れてきてたし」


加藤にハンカチを渡す。

「これでよかったら使って?何か飲み物でも買おっか」


広場にある自販機に向かう。


グイッ!!


「先に話したい」


加藤に引っ張られた腕。
そこから伝わる体温。



話……


聞きたいけど、聞きたくない。
加藤はどんな進路を決めたの?

その先に私はいますか?


私は加藤がどんな道を選んだって絶対そばにいる自信がある。

だけど加藤はどうなんだろう……


加藤の未来に私が映っているのかな。



「桜、面談どうだった?」

「私は今まで勉強サボってたから、これから塾三昧になりそう。自業自得やわ。でも受験に向けて頑張るつもり」

「そっか。桜なら大丈夫だよ」


優しく笑う加藤。
もう片想いして丸1年だなぁ。


怖いけど聞かなきゃだよね。
その為に今日こうして会ってるんだから。


勇気出せ!!私!!!!

自分に鼓舞する。


「加藤は?ちゃんと話したい事言えた?」

「あー…うん。卒業後は就職するって言った」

「うん」

「じゃあさ…母さんが進学しろって。担任も奨学金がいけるだろうから大学目指せって言ってくれて…」

「そうなんや!?」

私は思わず大声を出してしまった。


「でも、弟いるし母さんも楽させたいから俺はやっぱり働きたいなと思って」


ほら、加藤はやっぱり自分の事より周りの事。

こういう所が大好きなんだけどね。
だけどね


「私が言うべきじゃないんやろうけど…加藤はほんまはどうしたいん?」

「え…?」

「家の事関係なく進学したい?就職したい?」


下を向いて黙る加藤。


「おばさんもきっと加藤の素直な気持ちなら就職も受け入れてくれると思う。でも、そばで見てて加藤には進学して欲しいんだよ、おばさんも弟さんも」


なんだか偉そうに言ってしまった。
だけど、加藤にこのまま諦めてほしくない。
本当に進みたい道に進んでほしい。