「コンクール…応援してるからね」

「うん、ありがとう。来月は予選なんやけど無事通ったら京都一緒に行って」


「本気で言ってるの!?」

「当たり前やん」


やっと少しずつ鈴原くんと別れた現在(いま)に慣れてきたかなって思っていたのに

「だって…」

「ん?」


また期待しちゃうじゃない。


「練習の邪魔にならない?」

「なぁ日和」


鈴原くんの右手が私の頬に触れる。



「俺がそんな風に心配かけるようにしちゃったよな。ほんまごめん」


鈴原くん。。。


「俺の事は大丈夫やから、日和の気持ちが知りたい」


「私は…」


「教えて?」


やっぱり鈴原くんには敵わない。



「京都、行きたい…」


もう、鼓動がすごすぎて全身を駆け巡っているみたい。




ぎゅっ!!


「わわっ!!」

いきなり抱きしめられた。


「すっ鈴原くん!?」


「むっちゃ緊張したー!!断られるんちゃうかってビビってた」


そうなの!?


「ほら」

私の右手を自分の心臓に当てる鈴原くん。


「あっ…」

すごいドキドキしてる。


鈴原くんもドキドキしてたんだ。



「あはは!!」

私は思わず笑ってしまった。


「なに笑ってんねん。ダサいとか思ったやろ!?」


「違うよ。私もすごいドキドキしてたから、一緒なんだぁと思ったら嬉しくなっちゃって」


ほんとにすごく嬉しくなった。



むにーっ

いきなり両頬をつねられた。


「いひゃい!」

「日和のアホ」


そう言う鈴原くんの顔が真っ赤になってて、胸がきゅんとした。


「そろそろ行こか」


この時間が終わっちゃう。



「あのさ」

立ち止まって後ろからついて行ってる私の元へやってきた。


「俺はヤキモチ妬くし、独占欲結構ある方やなって最近自覚したし、未練がましいし、何より自己中やねん」


私は目がパチクリとなった。
漫画みたいに。


いきなり、どうしたの…?



「ヤキモチ妬いたりとか、しかもそれがバレるとかむっちゃダサいと思ってた。何でも気にせず流す奴が良いって勝手に思ってた」


ヤバイ、私


「やけど、ちゃうんよな。俺、無理してた。ほんまはむっちゃダサい奴やのにかっこつけようとしてたんよ、日和の前では」


鈴原くんを抱きしめたいって思っちゃってる。



「でも、もうやめた。ほんまの俺を見てもらってそれでも絶対日和を振り向かせるから」


あっ、強気な鈴原くんだ。



私は手をぎゅっと握って抱きしめたい衝動をなんとか抑えた。



「今…私たちは……友達です」


よく言うよ、私。


「うん、知ってる」


鈴原くんの本音を聞いて、決心がグラグラしまくっている。



「もっかい絶対俺を好きにならせるから」


付き合っていた頃に見れなかった鈴原くんの新しい一面。

本来の鈴原くんなのかもしれない。


そんな鈴原くんにも鼓動は激しく鳴る。



「覚悟しといてな♪オッケー?」


あなたを応援したい。
この気持ちを今は何より優先にしたい。


付き合うと、やっぱりもっと会いたくなっちゃうから。
声が聞きたくなっちゃうから。

わがままたくさん言っちゃうから。



「Noです」

「なんでやねん」

「あははは!!」


私にとって忘れられない修学旅行になった。