今日は木曜日。

別れてから音楽室に行ってない。


怖くて。

もし鈴原くんがいなかったら…と思うと怖くて行けてない。



だけど、そんな自分に踏ん切りをつける為にも今日は行くって決めていた。



キーンコーン…

終礼が終わった。


チラッと鈴原くんを見ると足立くんと喋っている。

まだ教室いた。
少しホッとした。


桜ちゃんと少し話してもう一度窓側を見ると


いない!!??


帰ってしまっていた。


やっぱり、もういない…よね。

だけど決めたから
ちゃんと行く。

行って受け止める。
諦めもつくしね。


「じゃ、また明日ね」

桜ちゃんと加藤くんにバイバイをして北館へ向かう。



この感じ、なんだろう。

鈴原くんと知り合う前の気持ちにちょっと似ているかも。


今日はピアノ聴けるかな?って思いながら上っていた階段。
懐かしいな。


今は意味がちょっと違うけど、それでもピアノが聴けるかなって気持ちはやっぱり同じかなと思う。




「えっ……」

4階に着く頃、大好きな音色が聴こえてきた。


「どうして…!」

気付けば私は走っていた。
どんどん近づく大好きな音色。


見なくてもわかる。
鈴原くんが弾いているんだって。


音楽室の前に着くと涙がこぼれてきた。


久しぶりに聴けた鈴原くんのピアノ。

私はやっぱり鈴原くんのピアノが大好きだ。



別れた事は間違ってなんかなかったんだよね。


「ふぇっ………」

その場にしゃがみ込んで声を押し殺して泣いた。



どうして涙が出るのか、自分でもイマイチわからなくて戸惑ってしまう。



私は扉を開けず外で聴いていた。




———————————————・・・

「デジャヴか…?」


扉を開けると日和がいた。


ホッとした気持ちと嬉しい気持ちが一気に押し寄せる。

正直、もう来てくれないんじゃないかと思っていた。



「まーた寝てるし」

しゃがんで寝てる。

初めて日和を知った時と一緒やな。


少しだけ見える顔を見ると、泣いた後がある。



「俺は…泣かせてばっかやな」

そっと日和の目元をなぞる。



「好きになってごめん」


今もずっと好きでごめん。



でも

「俺、もう逃げへんから」


俺はそっと扉を閉めて、演奏を再開した。
日和が起きて帰るまで。



愛しい人へ少しでも俺の演奏が届きますように。