それからも足立くんは毎朝迎えに来てくれて、一緒に学校へ行くのが日課になってきた。

お昼ご飯はみんな気を遣ってくれているのか、私と桜ちゃんと加藤くんの3人で、鈴原くんと足立くんは2人で食べている。

あれから全然鈴原くんと喋っていない。
もう別れて1週間以上経った。



もう鈴原くんの中で、私は完全に消えちゃったのかな。

私ってほんとに矛盾だらけ。



「足立くん、安田先生がこれ渡してって言ってましたよ」


目の前で言ってるのに無視状態の足立くん。


「足立くん?」

私何かしたかな?


「私何かしましたか?」


「…なんで」

ぼそっと聞こえた声。



「あれ以来名前で呼んでくれてない」


えっ!!


急にそんな事を言うから恥ずかしくて俯いてしまった。


「名前で呼んでくれなきゃプリントいらない♪」


なんというワガママを…!!


「足立くん、ワガママ言わないでください」
「ワガママじゃないもん」


これじゃ大きな子どもじゃん…!!!


休み時間。
周りもガヤガヤしてるし、聞こえないよね?



みんなの前でって緊張するし、恥ずかしいよ。



ガタッ

私は鈴原くんがこっちに向かってきているのに気づいていなかった。




「彗くん、ちゃんともらってください」


よし。頑張って言えた!!


右側から視線を感じる。

横を見ると鈴原くんがいた。


「鈴原く…ん」

こんな近くで鈴原くんを見たのはいつぶりなんだろう。




「仲良いな」

そう言って鈴原くんは席に戻ろうとした。


「あっ待っ… 「だろー?」


私の言葉を足立くんが遮った。



「なに?もしかしてヤキモチ妬いてんの?」

「は…何言ってんねん」


足立くんは私の肩に腕を回して抱き寄せる。


「足立くん!!」


私をジッと見る鈴原くん。


「嫌がってるように見えるけど?」

「そんな風に見えるんだったらお前の目はめでたいな」


なんか不穏な空気だよ。。




「やっぱり鈴原くんと前川さんって別れてたのー!?」

そんな空気を破ったのはクラスメイトの子たち。


「最近足立くんと学校来てるなぁって思ってたの!」
「学校で全然喋ってないもんね」
「鈴原フラれたかぁー!?」

みんな気づいてたの!?



「でもさぁー、別れてすぐ今度は足立くんとなんて…前川さんって結構軽いんだね」


ズキンッ


「ほんとに。しかも鈴原くんと足立くんってすごい仲良いのによく出来るよね」

「どこがいいんだか、前川さんって普通じゃん」


当然の意見。

ただ、いざ言葉で聞くとなかなかキツイものがあった。


でも、優柔不断な態度を取っている私が悪い。
何も言えない。


「あのさぁ!周りがうるさいんだけど!」

そんな声を止めてくれたのは桜ちゃん。



「人の恋愛、あんたらに関係ないやろ!?」

いつもこうして助けてもらってばかり。


私変わったんでしょ?
昔みたいに負けないって決めたんでしょ?



「桜ちゃん、ありがとう!」  


大丈夫だから。


「もう大丈夫だから」

そう言ってみんなの方を向く。



「鈴原くんと私は別れました。私に至らない点が多々あった事が原因です」  

「日和…!!」

久しぶりに聞こえた私を呼ぶ鈴原くんの声。
それだけで嬉しくて泣きそうになる。


「足立くんも友達として一緒にいてくれています。優しいのでこんな私にもこうして接してくれています」

私は一礼をした。



「なので、何も誤解しないでください。嫌な気持ちをさせてしまった方々には申し訳ありません」


さっきまで賑わっていたクラスが静まり返った。


去年は教室から逃げ出した。

中学の頃は人と接する事をやめた。


今は違う。
ちゃんと言葉に出来る。




「俺がフラれたんだよ」

沈黙を破ったのは大好きな声。


鈴原くんが私のそばにやってきた。



「俺が愛想尽かされたの。最低な事したから」

クラスが騒つく。


「鈴原くん…!?」


「俺がフるなんてあり得へん。こんなに惚れてるのに」


ドキンドキンッ

どうしてそんな事を言うの…!?


鼓動がみんなに聞こえちゃうんじゃないかって言うぐらい、うるさくて止まらない。



「悠、それはズルイよ。俺の方が好きなのに」

また足立くんが私の肩を抱き寄せる。


「だから触んな」

「君、もう彼氏じゃないよね?」


ビックリするような会話が私の頭の上で繰り広げられている。


周りも驚いている様子。



「すっ鈴原くんも足立くんも…前川さんが好きなの!?」

ひとりの女子が質問をした。
なんという質問を!!??


「そんなわけな… 「そうやで」

鈴原くんが私の頭の上に手を乗せた。


久しぶりに感じる鈴原くんの体温にドキドキが更に増していく。



「俺、日和に片想いしてるから」

「えーっ!悠と同じとか嫌だけど…俺も日和に片想い中だよ♪」



キャーッ!!とクラスが騒つく。


何が…起こったの…?


「鈴原くんと足立くんから片想いだなんてー!!」
「言われてみたいー!!」

黄色い悲鳴が止まない。





「やっぱ諦めへんから」

この角度。
あなたを見上げた時の首の角度。

体が覚えてる。



「絶対振り向かせる」

鈴原くんのSな所だ。
強気な所。



「俺だってもう遠慮はしないよ♪」

私を後ろから抱きしめて離さない足立くん。



これからどうなるの…!?