「あれっ早速泣かせちゃった」

足立くんらしさに戻ってなんだか笑ってしまった。



「足立くん、ありがとう」


私は鈴原くんに近づく。


「足立くん、ごめんね。少し鈴原くんと2人にしてもらってもいいですか?」


「…わかった」


足立くんは理由は聞かずにリビングから出てくれた。



「鈴原くん、立って」


「日和…俺……」



私はやっぱり鈴原くんが好き。
すれ違ったって、会えない時が多かったって、たくさん泣く事が多かったって



他の人とキスしちゃったって




「鈴原くん、別れてください」




大好きなのは変わらない

それが今日ちゃんとわかった。



だからこそ逃げずに伝える。






「…え………」


「お願いします」




あ、私手が震えてる。


気を抜くと涙が出ちゃう。




バレないようにしなきゃ。




「日和、ほんまに…?」

「うん」


「俺、信じてもらえるように頑張るから」


違うの。
信じれないとかじゃないの。



本当は鈴原くんの夢を聞いた時から私が言わなきゃいけなかったんだ。



私は大好きなあなたに負担をかけてた。

私の為に頑張らないで。


夢をまっすぐ追いかけて。



その決心がたまたま今回ついただけだから。



だけどね



「……信じられないから…ごめんなさい」


鈴原くんを傷つけるってわかってるけど、せめて嘘の理由だけは言わせて。



そうじゃないと簡単にこの決心は鈍るから。




「頼む。もう一回だけチャンスをくれ」
「無理だよ!!!!」



お願い

これ以上は決心が鈍るから。
抱きしめたくなるから。

あなたと離れたくなくなるから。



大好きなあなたを応援出来なくなるから。




「鈴原くん、ごめんね。もう帰って」


あと5分もたない。
涙が出ちゃう。




「…わかった」



鈴原くんを玄関まで見送る。




なんだか不思議な感覚。
足がふわふわしてるような感じ。



「日和、俺はこれからも好きだから」

まっすぐな、だけど今まで見た事ないような悲しげな鈴原くんの表情が私の覚悟を揺らす。




「鈴原くん…さよなら……」


そう言って鈴原くんを見送った。



鍵を閉めて、玄関に座り込む。




私、言えたよね?



別れたんだよね。



ちゃんと嫌な子になれたかな?

せめて嫌な子の印象にならなきゃ、鈴原くんに恩返しにもならない。



あんな奴別れて正解って思ってもらわなきゃ。





【日和、俺はこれからも好きだから】


脳内でリピートされる言葉。




「うっ…」

我慢していた涙が堰を切ったように溢れ出す。




自分で決めたくせに私はほんとに弱虫だ。






ギシッ

顔を上げると足立くんがいた。




「悠に言ったの?」

私の目線に合わせるようにしゃがみ込む足立くん。



「別れたの?」


私は小さく頷いた。


「ほんとにそれでいいの?」


「はい…決めた事だから……」



ぎゅっ


「思う存分泣いていいよ」


「離して…ください。私はもう…」


「無理。これは甘えるとかじゃないから。一生こうしとくよ?」


私の言いたい事、なんでも見透かしてる。




「う…わー…!!」


私は声を出して泣いた。