パッと私から離れた足立くん。


「ありがとう」


「どうして足立くんがお礼を言うの?」


「え?あっ、そういえばなんでかな」


「あはは!足立くん、おかしいー」



話さないって決めたのに

もう甘えない、迷惑かけないって決めたのに



そんな気持ちは簡単に揺らいで、すぐ甘えてしまう。



「…いいよ」


「え?」


「そんな風に笑ってくれるなら、やっぱ無理して話さなくてもいいよ」



足立くん…



「悠には敵わないだろうけど」



ドクンッ



鈴原くんの名前に反応してしまう。


「日和?」


夕方に見た光景が蘇る。



涙を我慢できない。





「あっ…」

言葉にするとあの光景がまた鮮明に思い出してしまいそうで……




「キ……」

「キ…?」



「キ…スしてました…」

「キス…?」


「鈴原く…んと‥真穂ちゃんが…」


言葉にした瞬間涙が止まらなくなって、私はその場にしゃがみ込んだ。



足立くんが抱きしめてくれる。



「辛い事言わせてごめん」


私は甘えてしまっている。
足立くんの優しさに。


泣きじゃくる私の背中を、子どもをあやすようにポンポンと優しく叩いてくれる。



「見間違えかもしれねーじゃん」


「悠を信じてやって…」

ポソッと聞こえたその声に優しさがさらにこもっていて、涙が止まらなくなる。






こうして足立くんに甘えている私こそ、ズルくて最低だ。