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「悠!!」


屋上からの階段を降りて廊下に出た所で彗に会った。


「日和なら屋上」

「どうしてお前だけここにいるんだよ!?」


「早く行ってやって。頼むから」

「悠!?」

「日和、絶対泣いてるから」

「お前……」

「頼むから早く行ってくれ!!」


俺の気持ちを察したのか、彗はそれ以上何も言わず屋上に向かって走っていった。



ダンッ!!!

壁を叩く。


なんなんだよ…!

情けねー、ただのヤキモチや。


今まで抑えてこれたのに
溢れ出すと止まらなくなる。


自分の事棚に上げて、俺あんなひどい事よくも言えたな。



最低や。




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ガチャッ!!


「日和ちゃん!!」


しゃがみ込んでいる日和ちゃんの後ろ姿。

俺の声に反応はない。


俺は急いで駆け寄った。



「日和ちゃん!」


呆然とした表情で涙を流している日和ちゃん。
ただただ静かに涙を流している。


俺の方を見ない。
というか、俺に気づいているのか!?

意識が抜けたような状態。



「日和ちゃん!!日和!!!!」

両手で肩を揺さぶる。



「あ…れ……足立くん…?」


「やっと見てくれた」


涙で頬はびしょ濡れ。



こんな時に卑怯だってわかってる。

ズルいってわかってる。


だけどさ、こんな日和ちゃん見たくねーよ。



「えっと……鈴原くんは…」

「悠の事は気にすんな」

「わた…し……鈴原くんの事傷つけちゃったの…」

「いいから」

「傷つけちゃ…て…」

「もういいから!!」


俺は日和ちゃんを抱きしめた。



「足立く…はなし…て…」

「嫌だ。絶対離さない」

「あだ…ちくん…」

「俺絶対離れないから。だからいっぱい泣き」


日和ちゃんは首を横に振る。


俺は抱きしめる力をさらに強める。


「頼むよ、日和…」

日和ちゃんはそれでも俺から離れようとしている。



「俺には全部見せてよ」

日和ちゃんの離れようとする力が弱まった。



日和ちゃんの頬に触れる。
目が合う。



なんで、こんな想いしてまで悠といるんだよ。

俺なら絶対こんな想いさせない。


目元に触れる。



「日和ちゃん、俺にしてよ」


目を大きく見開く日和ちゃん。



「俺、もう遠慮しねぇ。我慢もしねぇし」


今までとは何か違うとわかったのか、日和ちゃんの表情が少し強張る。



日和 “ちゃん” か……




「日和…俺は君が好き」



日和の涙は止まって、俺をじっと見ている。




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沈黙が数分続いた。