どこに行ったんだろう。


帰った?

でも、鞄はまだ机にあったし。



音楽室!!


私は北館に向かって走った。


音楽室に着くと次の授業の子たちがいて賑わっていた。

「ここじゃない…」


どこなの。


探し回っているとチャイムが鳴った。


授業どころじゃない。



「君、どうしたんだ?授業始まるぞ」


「はい!すぐ戻ります!」

すれ違った先生に嘘を言って鈴原くんを探す。



保健室にもいない。

体育館もいない。


ねぇ、どこに行ったの。




走り回って汗が止まらなくなってきた。




ふと思いついた場所。



お昼ご飯を食べる場所から近い屋上。


ダメ元でそこに向かった。




「はぁはぁ…」

屋上の扉を開けた。




「鈴原くん!」

いた!!


「…日和!?」


会えた。

よかった。



私はホッとしてその場にしゃがみ込む。



「お前…なんで…!?汗だくやし」

「鈴原くん、かくれんぼ上手だね」

「は…?かくれんぼ?」

「もういきなり始めるんだもん。ビックリだよ」

「日和…」


私なりのジョークにしたつもりだけど、全然面白くないよね。

確信を聞くのが怖いだけ。
私の弱虫。



「ねぇ鈴原くん、私何かしちゃったかな…?怒らせならちゃったならちゃんと謝りたくて」


「違うから。そんなんちゃうから」


「嘘つかないでよ。ちゃんと教えてほしいの」


「さっきは俺がごめん。ちょっとイラついてただけやから」


ほら、そうやって我慢する。
鈴原くん、受け止めてばっかり。


「ちゃんと言ってくれなきゃ嫌」

「だから何もないって言ってるやろ」

「嘘だよ!」

「嘘ちゃうし!」

私にしては珍しく、めげずに会話にしがみつく。


「鈴原くん、何も言ってくれないし意味わかんないよ!!」


あっ…
言い過ぎたかもしれない。



「…あっそ。なら言わしてもらうけどさ」


ドクンッ


「彗と図書館行ったり楽しそうやん?前昼飯行ったんやろ?俺、何も知らん」


あっ…

「日和こそ俺に何も話さへんよな。俺いっつも彗や桜から聞いて知るんやけど」


それは…


「ご…ごめんね。私聞かれないと自分の予定とか全然言わなくて…」


足立くんとの事だけじゃなく、桜ちゃんとの予定とかも聞かれないと自分からは言わなかった。

全然悪気はなかった。

自分の予定を言って良いのか…とか、鈴原くんはそれを聞いてどうなのかな?とか色々考えちゃうとわからなくなってた。



「俺ら、付き合ってるんやんな?」


「うん!そうだよ!!」


鈴原くんが大好きだから、練習とかの邪魔をしたくない。
夢を応援したい。

そしてそばにいたい。


それが私の鈴原くんの大好きな気持ち。




「俺は…最近よくわからんくなる」


え…………


「俺らって付き合ってるんかな」


何言って……


「彗がお似合いなんちゃうかな…?」


どうして


「俺最悪やろ。こんな事言うんやで」


ねぇ、どうして



「こんな俺やめて、彗にしたら?」



私は言葉が出ず、ただ首を横に振る。

必死に振る。



「わかんねぇわ、もう…」


鈴原くんはそう言って屋上から出て行った。





あれ

さっきまでは涙すら出なかったのに、涙が溢れ出す。




何が起こったの…


私、ここにどうしたくてやってきたの