「数日で腫れは引くと思うわ。安静にしなきゃだめよ」

保健室で先生に湿布を貼ってもらい、一安心。



「先生、ちょっと職員室行ってくるから休み時間まで少し横になってなさい」

「はい」


先生は職員室に向かった。


足立くんの怪我がひどくなくて本当によかった。



「足立くん、さっきはありがとう。痛い思いさせてごめんなさい」

「全然痛くねーし大丈夫だよ」

「横になって安静にしてね。私は先に体育館戻ります」


「…待って!!」


足立くんが私の腕を掴んだ。



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体育館。



「俺も保健室行ってくるわ」

「えっ!?日和ついて行ってるし大丈夫ちゃう?」


「…だから心配やねん」

悠…。


悠は保健室に向かった。



私、何してんねやろ。

なんで悠を引き止めたん?


「足立の気持ち気づいてないのは前川だけなんだろうな」

「加藤もわかってたん!?」

「当たり前だろ。あんなわかりやすいのに」

「だよね…」


さっき、私は一瞬足立の味方をしてしまった。


「悠は大事な幼馴染みで日和は大事な親友。そんな大事なカップルを応援したいはずやのに私さっき…」


最低な事をした気がする。



「普通じゃない?」

「え…?」

「それぐらい足立も桜にとって大事な友達になったって事だろ?」


どうして加藤はいつもこうして寄り添ってくれるの。


「それに…どうせ桜の事だから、鈴原のこれからを考えると前川が寂しい思いをするから足立ならそんな思いさせないんじゃないか…とか考えてんだろ?」


この人には敵わない。


「…なんでわかるん?」

「桜の事ならなんでもお見通し」

「…バカ…‼︎」


気持ちが楽になった。


この前真穂って子に会った時に、より感じた気持ち。


日和はこの先絶対悲しむし苦しむ。


悠を応援したいのはもちろん絶対。


夢を全力で応援したい。

だけどさ

そこに日和の悲しみがセットになるのは納得出来ひん。


おせっかいだってわかってる。
迷惑だってわかってるけど……


「桜はほんと友達思いだね」

「あんな心が綺麗な子、なかなかいないよ」

「前川も絶対桜の事そう思ってるよ」


そんな事をふいに言うから、私は照れてしまう。


「照れてるの?可愛いー」

「バカ加藤!あっち行ってよ!」



「お前らー。そのままずっとサボるなら単位無しだぞ」


げっ!!


「やりますやります!」


加藤がこっちを見て微笑む。



好き。


大好き。



だけど、あともう一歩が進めない私たち。



ねぇ、加藤


名前で呼びたい。




「貴広…」



加藤には聞こえないほどの小さな声で呟いた。