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「やべ。体操着忘れた」

「ほんならサボる?」



屋上にやってきて、ツンと寒い冬の空気に顔をしかめる。



「珍しいな。悠がサボるなんて」


「そう?前、日和ともサボったで」


悠の口から日和ちゃんの名前が出るたび、なんとも言えない感情になる。


妬いてるのか?

そんな資格、俺には無いのに。


彼氏がいる子を好きになった俺が悪いのに。



「俺さぁ、絶対負けへんで」

「え?」

「何があったって手離すつもりないから」

「………」



お前も何でもお見通しなんだな。




「ごめん」

「…何が?」



「昼飯2人で行った」

「ふーん」

「我慢出来なくて、ほっぺ触った」

「うん」

「頭撫でた」

「俺の前で肩だって抱いてたろ」



「何回か…抱きしめた」

「…それで?」

「俺を見てって言った」


「あのさ、俺にバカ正直に言い過ぎや」



こんな奴、もう一緒にいたくねぇよな。






「俺、変わってるんかもやけどさ…お前と親友なんは変わらへんから」


なんでそんな事が言えるんだよ。
悠の言いたい事がわからない。




ガシッ

制服の襟を掴まれた。



「勝手に日和に触りやがって…‼︎ほんまムカつくし殴りたい」


「…殴れよ」

俺はその方が救われる。





パッと手が離れる。




「あー、ほんまムカつくわ。俺、お前の事も好きなんよな。それがさらにムカつくわ」



なんだよ


「情けとかいらねーし。同情か!?」

「は?そう思いたいんやったら思えば?」



ガシッ

今度は俺が悠の襟元を掴む。



「余裕こいてんじゃねーよ!ムカつくんだろ?殴れよ!お前の彼女に手出してんだぞ!?」



どこまでも優しい悠に苛立ちがおさまらなかった。



殴れよ。
友達なんかやめろよ。

こんな俺、軽蔑しろよ。